

【事例紹介】電池配線モジュール(BBM)用部品の輸送品質改善(三谷産業株式会社様)
TSKは“現場の物流をデザインする会社”として、輸送包装の領域で、安全にモノを運ぶための緩衝設計や、最適なコストでモノを運ぶための空間・構造設計を行っています。この記事では、TSKがこれまでに手がけた包装設計の実例をご紹介します。
今回ご紹介するのは、三谷産業様の「電池配線モジュール(BBM)用部品の輸送品質改善」です。この事例では、輸送時の品質トラブルを防ぐため、BBM用部品に使用する包装材を真空成形トレイに置き換える改善を行いました。
開発の経緯
従来、このBBM用部品の荷姿は、プラダンと発泡シート、発泡材を組み合わせた仕様でした。しかし、製品のヒンジ部分やピン部分を保護しきれず、輸送中に白化が発生。破損の可能性もありました。こうした輸送品質の課題を解決するため、「より適した包装方法はないか」とご相談いただきました。
▲【改善前】
発泡シートの上に製品を置き、緩衝材として発泡材の棒を並べて製品を固定すると同時に、ピン部分を保護していました。しかし、この包装形態では落下試験時に品質トラブルが発生していました。
真空成形トレイを採用
こうした品質トラブルを防ぐには、BBM用部品の複雑な形状に対応する必要がありました。そこで、その複雑形状に合ったポケット形状を再現することができる真空成形トレイに変更。トレイに凹凸をつけることで製品を固定しながら、保護したいピン部分を逃がす構造を採用しました。
▲【改善後】
真空成形トレイの突起部分(①)を製品にはめ込むことで左右に動かないように固定し、製品同士の接触を防止。この突起は収納時のポカヨケの役割も果たしており、製品のピン部分が上向きだと製品を収納できないようになっています。ピン部分はトレイに設けた空洞(②)に逃がすことで、緩衝による破損を防ぎました。
さらに、トレイの左右にも空間を設けることで安全性を高めています。落下試験では、トレイの側面が内側に倒れ、製品と接触して白化が起こっていたため、側面を支える斜め構造(③)を設けることで、トレイの折れ曲がりを防ぐ工夫を施しました。
改善による副次的な効果も
真空成形トレイの採用により、製品の破損防止以外にもさまざまなメリットが生まれました。
(1)ヒューマンエラーの防止
製品の縦横・裏表の向きを間違えるとトレイに配置できない形状にし、包装時の作業ミス防止にもつなげました。
(2)効率化とコスト削減
従来の包装材では、4種類ある樹脂部品ごとに異なる緩衝材の配置が必要でしたが、改善後はトレイを共用化することで作業効率を向上。金型費用の削減や、資材を管理する手間削減の効果も得られました。
(3)資材を削減し、地球環境にも配慮
真空成形トレイは耐久性に優れており、繰り返しの使用が可能です。この事例では、3年間の製品生産期間中、一度もトレイを交換せずに使い切ることができ、資材の廃棄量削減による環境負荷の軽減にもつながりました。
まとめ
今回の事例では、開発段階でお客様と何度も対話を重ね、試作を繰り返しながら最終的な形へと仕上げていきました。一方的にご提案するのではなく、お客様の要望を丁寧に汲み取りながら信頼関係を築き、開発を進めることを意識しています。
TSKでは真空成形の技術を活かし、輸送時の安全性を高めると共に、包装作業のミス防止や効率化など、包装に関わる工程全体を最適化する工夫を行っています。また、落下試験や振動試験を開発プロセスに組み込み、自社内で一貫して実施することが可能です。自動車部品や電子部品、精密機器の輸送や包装でお困りの方は、ぜひ一度、私たちにご相談ください。