「運ぶ」を最適にデザインする。 TSKの真空成形トレイ、3つの強み
世界的に自動車のEV化が進む中で、精密部品を安全に運ぶための包装設計はますます重要性を増しています。その有効な手段のひとつが、真空成形トレイです。TSKは2013年、ベトナム拠点の立ち上げと同時に真空成形事業をスタートしました。
この記事では、そもそも真空成形とはどのような技術なのか、TSKがこの事業に参入した背景、そしてTSKの真空成形トレイが持つ強みについてご紹介します。
真空成形トレイとは?

真空成形とは、シート状のプラスチックを加熱して柔らかくし、真空状態で金型に圧着させることでトレイを成形する技術です。自由自在に形を変えられるため、製品に合わせて複雑な形状のトレイを製造可能です。また、段ボールや発泡材と比べて発塵が少なく、クリーンな包装を実現できる点も特徴です。
真空成形トレイの用途は、大きく「食品用」と「工業用」の2つに分けられます。食品用は、お菓子やお弁当の容器、卵のパックなどが代表的です。一方、工業用は自動車部品や電子部品といった工業製品を安全に搬送するための容器として用いられています。TSKはこの「工業用」に特化した真空成形トレイメーカーです。これまでに500社以上の車載部品・電子部品メーカー様との取引実績があります。
<真空成形トレイの製造工程>
①「成形」・・・加熱してトレイの形をつくる

②「プレス」・・・成形したトレイの四方を型抜きする

③「検査」・・・完成した製品の仕上がりをチェックする

TSKの真空成形事業の歩み
TSKは1993年に、セメント袋をつくる製袋事業からスタートしました。その後、緩衝包装材の企画・設計・製造・販売へと事業を拡大し、「包装はモノを運ぶための一要素に過ぎない」という考えのもと、マテハン機器の取り扱いも開始。以来、“現場の物流デザイン”の会社として、時代に合わせて挑戦を続けてきました。
当社が真空成形トレイに着目したのは2010年代初頭です。自動車のEV化に伴い部品の電子化・精密化が進むと、運搬用容器に対する品質要求も高まることが予測されました。電子部品は微細な異物の付着でも不具合を引き起こす恐れがあり、段ボールや発泡材、仕切り材のように紙粉やほこりが発生する資材にはコンタミのリスクが伴います。
一方、真空成形トレイは、ソリッド素材であることに加え、徹底した管理・検査体制のもとで製造するため、こうした資材と比較して高いクリーン度を実現できます。さらに、プラスチックを薄く引き伸ばして成形するため、ほかの包装材と比べて資材の量を抑えられるのも特徴です。このように品質とコストの両面で優位性を持つことから、当社は将来的な需要拡大を見据え、真空成形事業への参入を決めました。
「TSKベトナム」を立ち上げ
その最初の拠点として選んだのはベトナムです。2013年、ハノイに工場を建設し「TSKベトナム」を立ち上げました。

当初は、お客様から要望のあったブリスターパック(真空成形トレイの一種で、プラスチックケースと板紙がセットになったパッケージ)の製造からスタートし、その後、成形機・プレス機・金型を削るCNCマシンを導入し、本格的に真空成形トレイの生産を開始しました。現在は、24時間体制で5つのラインを稼働させ、大ロット・低コストの真空成形トレイの生産を得意としています。
日本でも真空成形事業をスタート

その後、ベトナムで生産したトレイを輸入し、日本のメーカー様にお届けするというかたちで、国内でも徐々に商圏を広げていきました。その間も自動車のEV化の流れは着実に進み、工業用トレイのマーケットは当初の想定通りの広がりを見せていました。こうした状況を踏まえ、2018年には富山本社に真空成形工場を新設し、日本国内でも本格的に真空成形事業を開始しました。2025年9月現在、富山工場には成形機5台、プレス機4台、CNCマシン2台を備え、高品質な真空成形トレイの生産に取り組んでいます。
・成形機

・プレス機

・CNCマシン

TSKの真空成形トレイ、3つの強み
TSKの真空成形トレイは、充実した設備環境と長年培ってきた包装設計のノウハウを軸とした3つの強みを持っています。
①金型からの一貫メーカー

1つ目は、企画から設計・試作・量産・納品までを自社で一貫対応できる点です。
具体的な流れとしては、まずお客様から物流条件や製品特性、ご要望をヒアリングし、その内容をもとに企画・設計を行い、試作品を製作します。さらに、落下・振動・輸送試験を通じて安全性と品質を検証し、問題なければ量産・納品へと進みます。この一連のプロセスをすべて自社で行うことで、高品質・低コスト・短納期をバランスよく実現しています。
・品質へのこだわり
当社が保有する成型機は条件制御システムを搭載しており、常に同じ湿度やサイクルタイムで生産できるため、ロットによる品質のばらつきを防げます。また、真空成形トレイは、プラスチックシートをゴムのように伸ばして形をつくるため、トレイの底が深くなればなるほどシートは薄くなります。そこで、必要に応じてアシストプラグを用い、この厚みを均一に保てるように工夫することで、複雑な形状の製品でも偏肉の少ない安定した品質を実現しています。
プレス工程では、4支柱サーボモーター制御によりカット圧を均一に調整。割れやバリを防ぎ、切りくずの出ない仕上がりを可能にしています。
・コストとスピード
日本・ベトナムの両拠点でCNCマシンを保有し、試作や量産に欠かせない金型も内製化。試作においては、目的に合わせて3Dプリンタも活用することで試作のスピード対応が可能です。こうしたすべてのモノづくりを社内で完結させることで、コスト削減とお客様の開発リードタイム短縮に寄与します。
②グローバル展開
2つ目の強みは、ベトナム拠点を中心としたグローバル対応です。
・海外でも一貫生産&現地調達
TSKベトナムにおいても、日本同様に企画から納品までの一貫体制を整えています。国内で開発後に海外で量産する場合でも、すべてをTSKグループ内で対応することで、現地の包装材メーカーを探す手間やコミュニケーションロスを減らし、スムーズに量産まで進めることができます。細かな仕様変更や納期調整にも柔軟に対応し、量産後の現地フォローも継続的に行います。また、トレイのほかにも、袋や外箱、パレット、乾燥剤など、輸送に必要な一連の資材もすべて現地調達することが可能です。
・大ロット対応&最新設備
TSKベトナムでは、5ライン24時間稼働で生産を行うことで大ロットを得意とし、日本と比べて製品単価も安く抑えられます。高い設備保全能力を持ち、自社によるフルメンテナンスで10年以上にわたって同じ設備を大切に使い続けています。新しい成形機も積極的に導入しており、近年、需要が高まっている長尺部品に対応したトレイの製造も対応可能です。これまでは奥行き1メートルほどが限度でしたが、新しい成形機では奥行き2メートルのトレイを成形可能。お客様や業界のニーズに合わせてモノづくりを行うマーケットインの考え方で設計・生産体制を整えています。
③企画提案力

3つ目の強みは、包装材メーカーとして培ってきた企画提案力です。単にトレイを製造するだけでなく、お客様にとって最適な「モノの運び方」や「荷姿」をご提案します。
・収納効率の最大化
真空成形トレイの企画・設計で特にこだわっているのは、収納効率の最大化です。形状を自由自在に変えられる真空成形の特徴を活かし、製品の向きや置き方を工夫することで、限られたスペースに効率的に製品を収納し、物流費の削減につながるアイデアをご提案します。ほかにも、作業ミスを防ぐ仕掛けや取り出しやすさを考慮した設計、ロボットピッキングへの適合、色の識別管理など、プラスアルファのご提案で付加価値を生み出します。
・周辺資材を含めたトータル提案
真空成形トレイだけでなく、外箱やパレットなど、輸送に必要な資材もまとめてご提案可能です。これまでに幅広い包装資材を扱ってきた経験を活かし、最適な組み合わせをコーディネートします。
・素材選びの最適化

真空成形トレイに使用するプラスチックには、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)など複数の種類があり、それぞれに特徴が異なります。例えば、PETは剛性が高く他の素材と比較して強度を出しやすく、PPは耐熱性に優れています。こうした素材の特徴を踏まえ、部品との接触で削り粉が発生している場合は摩耗性が高いPET、熱による変形にお困りであればPPというように、お客様のご要望に沿った素材選びを行います。
真空成形トレイはあくまで包装・輸送の一手段です。お客様の製品によっては、別の包装方法のほうがより安全・効率的に運べる場合は、真空成形以外の方法も含めて柔軟にご提案します。
・試作技術の多様な選択肢

試作は、量産に入る前の重要な工程であり、ここで設計の問題点をすべて洗い出し、クリアにしていきます。試作の方法は、主にアルミ型、合成樹脂型、3Dプリンターがあり、それぞれコストや品質に違いがあります。
この試作方法も、お客様の要望や目的に合わせてご提案します。例えば、コストを抑えたい場合は、3Dプリンターが有効です。しかし、サイズが限定されるため、大きい製品は再現できない難点もあります。そこで、ポケット部分だけを先に3Dプリンターで試作し、収納時のがたつき具合をチェック・調整しておくことで後戻りのリスクを減らす、といったご提案が可能です。ほかにも、全体の出来栄え確認などを想定した少量の試作であれば樹脂型、量産を想定した試作であればアルミ型というように、お客様の目的に応じて、どの試作方法が最適かを見極めます。
☛まとめ
TSKの真空成形トレイは、「一貫体制」×「グローバル展開」×「企画提案力」という3つの強みを掛け合わせ、お客様の多様なニーズにお応えします。
真空成形のプロフェッショナルとして、開発に伴走

2024年10月、TSKは新たに「TSKメキシコ」を立ち上げ、真空成形トレイの事業を北米へと拡大しました。
近年、自動車部品メーカー様からは、「開発スケジュールがタイトで、製品の運び方にまで手が回らない」といったお悩みの声を聞くことが増えてきました。TSKは、そうした課題を解決するパートナーとして製品開発に伴走し、包装設計に関しては安心してまるごとお任せいただける存在を目指しています。
今後も、日本・ベトナム・メキシコの三拠点を緊密に連携させ、技術力と提案力のさらなる向上に努めてまいります。
真空成形トレイの導入や、輸送効率・品質の向上をご検討の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
<関連ページ>
-【事例紹介】3次元の収納設計で入数を倍増
https://tsk-corp.jp/journal/880/
-「TOKYO PACK2024–東京国際包装展」に真空成形で初出展!
https://tsk-corp.jp/journal/708/